日本化学会

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モノヘキサデシルリン酸アルギニン塩が形成するαゲル

α-Gel Formation of Monohexadecyl Phosphate with L-Arginine

αゲルは古くから化粧品やトイレタリー製品など生活に身近な産業で利用されており,以前よりその構造は知られていた。αゲルを簡単に説明すると,界面活性剤の長軸方向へは規則的なラメラ構造を持ち,短軸方向ではヘキサゴナル状に配列した構造といわれている。このαゲルについては近年様々な実験系で研究が行われており,筆者らは非常に安定なαゲルを形成するモノヘキサデシルリン酸アルギニン塩について詳細に検討した。モノヘキサデシルリン酸アルギニン塩は古くから化粧品で用いられており,産業面で汎用性が高い。一般的なαゲルは熱力学的に準安定的で長期間の保存において構造が変化してしまう。しかしながら,この界面活性剤は水と任意の濃度で混同するだけで,熱力学的に安定なαゲルを形成することが筆者らの研究で明らかとなった1, 2)
化粧品などの産業面においても,安定性が良いという点はクリーム基剤として優れた機能を発現することが期待されている。クリーム基剤として用いた際にαゲルは皮膚の細胞間脂質と類似したラメラ構造を有するため肌の保湿性が高く,硬いシート状の構造を有するため,軽い伸びで肌上へ塗布できるため使用感も優れている。
αゲルに限らず学術的な興味深さと産業面での機能性を併せ持つ素材の研究開発は,学術面に対しても工業利用に対しても有益な情報が得られることが多く,幅広い分野で応用・発展していくものと期待する。

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1) K. Tanaka et al., J. Oleo. Sci. 2018, 67, 851.
2) K. Tanaka et al., J. Oleo. Sci. 2019, 68, 225.

田中佳祐 ニッコールグループ株式会社コスモステクニカルセンター