日本化学会

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バイオマスプロダクトツリー

Biomass Product Tree

当社(ダイセル)は,2021年10月8日に京都大学と包括連携協定を締結した(図,連携イメージ)。常温常圧という温和な条件で木材を溶かす技術を確立し,高機能製品の開発につなげるべく,京都大学と研究を進めている1)
2017年夏,京都大学宇治キャンパスで先生方から,「木が溶ける」という話をお聞きした2)。当時,イオン液体以外の溶媒で植物系バイオマスが溶解するという話はほとんど聞いたことがなく,新しいと同時に難易度が高いと感じた。ただ,ハードルが高い方がむしろやりがいがあると考え,社内会議で提案することを決めた。その後,2020年4月より,社内の正式な研究テーマとなり,本格的に京都大学との共同研究を開始した。
元来,パルプのような天然高分子は溶剤に溶けにくく,その製造プロセスはエネルギー多消費型である。容易に溶かすことができるようになれば,化学変換,成形加工などの効率が上がり,石油に頼らない産業につながることが期待できる。この温和な条件で溶解させ高機能素材に変える事業構想を,当社ではバイオマスプロダクトツリーと称しており,上述の協定締結と同時に,研究分野の融合と産学官連携の拠点として設置した産学共同研究部門の名前にも反映させている3)
今後この研究テーマへの取り組みを通して,持続可能社会の実現に貢献したい。

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1) https://www.daicel.com/news/assets/pdf/20211008.pdf
2) Y. Nishiwaki-Akine, T. Watanabe, Green Chem. 2014, 16, 3569.
3) http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/BiomassPT/index.html

北山健司  株式会社ダイセル・リサーチセンター