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錯体化学・有機金属化学ディビジョン遷移金属-アルミニル錯体への二酸化炭素挿入

CO2 Insertion to Transition- Metal-Aluminyl Complexes

遷移金属とアルミニウムが直接結合した錯体は,特異な反応性を示すことから近年注目を集めている。小分子活性化の分野においても例外ではなく,遷移金属-アルミニウム間に二酸化炭素が挿入される反応がいくつか見いだされている。
関連する研究が発展する契機となったのは,2019年にGoicoecheaとAldridgeらにより報告された金-アルミニル錯体(1)の例である1)。この錯体はNONキレート配位子を有するアルミニウムが金と結合しており,この金-アルミニウム結合間に二酸化炭素分子が挿入されることが見いだされた。この反応では金が求核剤のように働いており,詳細な反応機構にも興味が持たれている。このグループはその後,同様の銀錯体や銅錯体においても二酸化炭素が挿入することを報告している2)。一方,Hill,McMullinらはNN二座配位子をアルミニウム上の配位子とする銅-アルミニル錯体(2)を合成し,銅-アルミニウム間への二酸化炭素挿入を報告した3)。貨幣金属以外では,イリジウム-アルミニル錯体(3)と二酸化炭素との反応がCampらから報告されている4)。この反応では二酸化炭素分子の片方の炭素-酸素二重結合が切断され,イリジウムカルボニル錯体とオキソ架橋複核アルミニウム錯体が生成した。
今後は二酸化炭素以外の不活性小分子の活性化への展開も期待される。

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1) J. Hicks et al., Nat. Chem. 2019, 11, 237.
2) C. McManus et al., Chem. Sci. 2021, 12, 13458.
3) H.-Y. Liu et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2021, 60, 14390.
4) L. Escomel et al., J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 4844.

小野寺玄 長崎大学大学院工学研究科