日本化学会

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分子の形と元素の性質で実現する多機能性発光材料

Multi-Photofunctional Materials Realized by Molecular Conformation and Elemental Charateristics

発光性有機π共役分子は有機エレクトロニクス素子やバイオイメージングにおける発光材料として重要である。有機発光材料に対するニーズがますます多様化する中で,機能複合化を可能にする合理的材料設計指針の提案が求められている1)。筆者は分子の形(配座)と元素の性質を統合させた分子設計に基づき,ヘテロ元素として硫黄を導入することで熱活性化遅延蛍光(TADF)と刺激応答性を兼ね備えた電子ドナー・アクセプター・ドナー型の発光分子1を開発した2)。また,リン原子の化学修飾を介した電子供与能制御により,刺激応答性に加えて室温リン光(RTP)を示す発光分子2も創出した3)。最近,高周期カルコゲン元素(Se, Te)の導入により,窒素上の置換基が擬アキシアル位をとる配座異性体の熱力学的安定性が向上することを見いだした4)。分子3および4は希薄溶液中,二重発光性に基づく白色発光やRTPを示す等,ほかの誘導体にはない光物性を持つことを明らかにした。多機能性発光分子の設計には,配座や元素の性質以外にも考慮すべき要素が多く奥が深い。今後,多彩な分野との融合により,多機能性発光材料の発展が期待される。

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1) Y. Takeda et al., Chem. Asian J. 2019, 14, 1613.
2) Y. Takeda et al., Chem. Sci. 2017, 8, 2677.
3) Y. Takeda et al., Chem. Commun. 2018, 54, 6847.
4) Y. Takeda et al., J. Mater. Chem. C 2021, 9, 13942.

武田洋平 大阪大学大学院工学研究科