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太陽電池として認められたペロブスカイト太陽電池

Perovskite Solar Cells Recognized as Solar Cells

2009年,桐蔭横浜大学の宮坂力教授が色素増感型太陽電池にCH3NH3PbI3有機無機ペロブスカイト結晶を光吸収材として適用することで,世界で初めてのペロブスカイト太陽電池を発表した1)。当時はまだホール輸送材料としてヨウ素電解液を使用しており,その電解液にCH3NH3PbI3が溶出するために,耐久性が非常に低いものだった。最初の学会発表は小島博士(当時,宮坂研究室の学生)が電気化学会において口頭発表を実施し,聴講していた筆者としては非常に衝撃を受け,発表後に小島博士に「今日の発表で一番面白かった!」と激励した記憶がある。その後にノーベル賞候補の項目になるとは,当の本人も宮坂先生も予測できなかったと思う。
2015年には太陽電池の主要な国際学会であるInternational Photovoltaic Science and Engineering Conference(PVSEC)において,PVSEC AwardとHamakawa Awardがペロブスカイト太陽電池に関して授与され,「ついに有機系の印刷プロセス太陽電池が,本当の太陽電池として認められた」ということで,当時は非常に感慨深く思った。
CH3NH3PbI3ペロブスカイト結晶は水を吸収して分解してしまい,さらには背面電極(金もしくは銀)と反応してしまうために,非常に耐久性が低かったのだが,兵庫県立大学では多孔質のカーボン電極を背面電極として使用することで耐久性の向上に成功し,「屋外耐久性20年保証」に相当すると考えられる「温度85℃・湿度85%で3000時間」の耐久性試験において,初期値の80%以上の光エネルギー変換効率の維持を達成した2)。現在では,そのデバイスの大面積化と太陽光パネルの実証試験の準備を行っている。ペロブスカイト太陽電池はリサイクルが可能3)であるため,未来の再生可能な太陽光発電として期待されている。


1) A. Kojima et al., J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 6050.
2) E. Kobayashi et al., Cell Rep. Phys. Sci. 2021, 2, 100648.
3) B. Kim et al., Nat. Commun. 2016, 7, 11735.

伊藤省吾 兵庫県立大学大学院工学研究科