日本化学会

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液-液相分離における超分子の相選択性とタンパク質の局在制御

Supramolecular Localization in LLPS and Protein Confinment

水溶液の液-液相分離(LLPS)はポリエチレングリコール(PEG)やデキストラン(Dex)等の高分子や塩の溶液で形成され,生理活性物質の分離等に用いられてきたが,近年,核酸やタンパク質等が細胞内でLLPSにより濃縮相(液滴)を形成し転写や代謝反応等を制御していることが明らかとされ,生命機能の理解あるいは人為的な細胞機能の制御を目指し研究が盛んに行われている。また,in vitroで小分子が自己集合する際に,その初期において濃縮層が形成されることが最近報告され1),人工超分子とLLPSの関連も注目されるテーマである2)
筆者らは両親媒性ペプチド(Cya-PA)と蛍光小分子(Mel-NBD)を相補的水素結合により共集合し形成させた超分子を用いて,PEGとDexからなるLLPS中での相選択性を検討した(図)。この超分子は,Cya-PAに導入したアルキル基の数に応じてサイズが変化する。その結果,階層的な組織化により発達した構造を形成するCya-PA3/Mel-NBDがDexリッチな液滴への相選択性を示すことが確認された。さらに超分子へのタンパク質の物理吸着を利用して,液滴中にカスケード酵素であるGOxとHRPを局在化させることで,カスケード反応速度を向上できることが確認された3)

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1) C. Yuan et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2019, 58, 18116.
2) a)A. Jain et al., J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 15002; b)R. Kubota et al., J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 15155.
3) H. Obayashi et al., Chem. Commun. 2023, 59, 414.

若林里衣 九州大学大学院工学研究院