炭素循環社会の構築に向けて,低濃度CO2を回収し,水素化反応により直接CH4やCOへ再資源化する触媒技術(CO2 capture and reduction(CCR))が注目を集めている。CO2吸着能が期待されるアルカリ(土類)金属酸化物とCO2水素化能を有する遷移金属を無機固体担体に固定化した二元機能触媒を中心に研究されている。化学吸着によるCO2回収であるため,排ガスなどO2を含む混合ガス中のCO2の資源化に有望な触媒反応系である。
CCRによるCH4合成の研究はこれまでに多数報告されているが1),CO合成についてはUrakawaらがFeCrCu-K系触媒を報告して以降2),大きな進展がなかった。特に工業排ガスなどの直接利用が期待できる300℃付近でのCCRによるCO合成を実現した例はなかった。
筆者らは最近,350℃でCO生成に有効なNa酸化物修飾Ptナノ粒子触媒を開発した3)。このNa酸化物-Ptナノ粒子界面では,(1)吸着CO2が効率的にCOに水素化され,(2)Pt表面への生成COの吸着阻害によってCH4への逐次水素化が抑制される。CO2・O2混合ガスとH2ガスを連続的に交互に触媒層に流通させると,少なくとも6000サイクル(100時間)において,CO2回収率(約80%)・CO選択性(約95%)の低下なくCCR反応が進行した。
適切な界面設計により,今後さらなる高効率・高選択的CCR反応を実現する二元機能触媒の開発が期待される。
1) M. S. Duyar et al., Appl. Cat. B Environ. 2015, 168-169, 370.
2) L. F. Bobadilla et al., J. CO2 Util. 2016, 14, 106.
3) L. Li, S. Miyazaki et al., ACS Catal. 2022, 12, 2639.
前野 禅 工学院大学先進工学部環境化学科