日本化学会

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GC分析におけるヘリウム消費量削減の取り組み

Countermeasures for Reducing the Consumption of Helium in GC Analysis

ガスクロマトグラフィー(GC)やGC質量分析(GC-MS)においてヘリウム(He)は,不活性であること,安全で比較的広い最適線速度の範囲を有すること,真空度やイオン化効率が高いこと等から高感度分析やハイスループット分析に適しており,キャリアガスとして広く用いられている。しかし,近年,Heの供給不足が深刻化しており,分析機器メーカーは,ユーザー側に代替ガス(窒素,水素)の利用を推奨するとともに,He消費量削減のためのソリューションの提示や装置の改良等に取り組んでいる。
例えばGCでは,従来のキャリアガスにHeを用いた分析法を使用しながら,試料注入後にスプリット比を小さくしてHeの消費量を抑える機能や,連続で稼働している装置で次の試料の注入までの待機時間に自動で窒素等の代替ガスに切替を行う機能を搭載した装置が開発されている1)。また,通常のGC法から,内径が細くて長さが短いカラムを使用し,カラム温度を高速昇温するFast GC法に移行するパッケージが開発されており2),分離性能を維持したまま測定時間を短縮することでHeの消費量を削減できる。GC-MSでは,キャリアガスとしての水素の課題として,特定の化合物との水素化または脱塩素化反応の抑制が求められており,特殊な表面処理を施した水素専用のイオン源が開発されている3)。また,大気圧ガスクロマトグラフィー(APGC)イオン化法は大気圧下でイオン化を行うため,窒素でも高いイオン化効率を維持した高感度分析が可能である4)
「サスティナブルな分析の実現」はヒトや環境への安全性の保証等に必須であり,貴重な天然資源であるHeの消費量削減のため,今後も技術動向を注視し,積極的に活用していきたい。

1) https://www.an.shimadzu.co.jp/gc/eco/save_helium_gas.htm
2) https://www.jeol.co.jp/solutions/applications/details/2124.html
3) https://www.chem-agilent.com/pdf/te-hydroinert-source-5994-4889ja-jp-agilent.pdf
4) https://www.waters.com/waters/promotionDetail.htm?id=135026235&locale=ja_JP

椋本麻記子 住友化学 生物環境科学研究所