固体触媒における貴金属使用量の節減は重要であり,一般的には触媒活性サイトの増加を目的として担持貴金属の微細化による金属分散度の向上が有効である。一方,活性サイトの質,すなわち触媒回転頻度(Turnover frequency : TOF)の向上も有効であり,例えばRh/Al2O3のRh粒径を増大するとCO-NO反応のTOFが45倍増加することが知られている1)。これはNO還元に対するRhの構造敏感性に起因するが,粒径増大が金属分散度の低下を招くために省貴金属技術には該当しない。そこでこれらの知見を活用する新たな触媒設計指針として,貴金属の二次元配列による高TOF発現を利用した薄膜触媒が研究されている。
プラズマ発生エネルギーを利用して金属箔表面にRhを直接蒸着した厚さ数nmのRh薄膜触媒は,三元触媒反応に対して従来の粉末触媒に匹敵する優れた触媒活性を示す2)。本活性は二次元配列したRhのNO還元に対する高いTOF(粉末触媒の46倍)に起因しており,第一原理計算において,Rh薄膜触媒では表面拡散する解離N同士のN-N再結合過程に要する活性化エネルギーが従来のRhナノ粒子上に比べて低いことがわかった3)。本触媒では律速段階であるN-N再結合過程の加速が高TOF発現の主な要因と考えられるが,こうした薄膜構造に起因する金属の構造敏感性を利用することにより,従来予測をはるかに上回る高い反応速度の達成が期待される。
1) S. H. Oh et al., J. Catal. 1991, 128, 526.
2) S. Misumi et al., Sci. Rep. 2016, 6, 29737.
3) H. Yoshida et al., J. Phys. Chem. C 2019, 123, 6080.
芳田嘉志 熊本大学大学院先端科学研究部