日本化学会

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外部刺激によるMOFの機能性制御

Functional Control of MOF by External Stimulus

金属有機複合骨格(MOF)は貯蔵・分離・触媒等への利用に向けて精力的に研究が展開されているが,近年MOFの構築素子に機能性分子を組み込むことで外部刺激応答性を持たせ,新奇機能を引き出す試みが盛んである。例えば,松田らは,MOFへの光照射によって,従来は困難であった水溶液中における室温での溶存酸素除去能が発現することを報告している1)。このような外部刺激応答性の付与により,必要なときに機能を発現させるオンデマンドな用途の開拓が期待される。
一方で筆者らは,電子ドナーとアクセプターから構築されるMOF磁石において,酸素吸脱着に伴う磁石のON・OFF可逆制御を報告した(図上)2)。これは酸素の持つ電子スピンが骨格間の磁気相互作用を媒介し,磁気秩序を変化させることに起因する。機構は異なるが二酸化炭素吸脱着による磁石のON・OFF制御も実現している3)。また,佐藤らは,[2]カテナンから成る構築素子を集積させたMOFの合成に成功している(図下)。本MOFでは外部応力の印加に対し非常に変形しやすい上に弾性範囲が広いという,結晶性でありながらゴムのような,驚くべき力学特性が発現しており,さらにその特性は周囲の環境に応じて大きく変化する4)。このような外部刺激に対する応答性を備えることで,外部化学環境の変化をMOFの物理状態変化に変換し出力するセンサーとしての応用が期待される。

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1) M. Fujimura et al., Small 2021, 17, 2004351.
2) W. Kosaka et al., Nat. Commun. 2018, 9, 5420.
3) J. Zhang et al., Nat. Chem. 2021, 13, 191.
4) W. Meng et al., Nature 2021, 598, 298.

高坂 亘  東北大学金属材料研究所