多孔質樹脂は,その大きな内部空隙により,砕けることなく圧縮変形をすることができ,気孔率が高いほど大きな変形が可能となる。一般的に,スポンジのように柔軟な多孔質樹脂は小さな応力により容易に変形し,一方,大きな応力を加えない限り変形しないような固い材料は脆く柔軟性に乏しい。
筆者らは,多孔質樹脂の分子設計と細孔構造制御を行うことにより,「固さ」と「柔軟性」を併せ持つ新たな材料を作製することに成功した1, 2)。「固さ」は,圧縮に対する機械的強度に優れる,棒状の骨格が分岐しながら三次元的につながったトラス構造に類似の細孔構造に起因する。「柔軟性」は,適度な架橋密度の架橋高分子(フェノール樹脂など)に対し,一次元線状ポリマー(ポリエーテル型ブロックコポリマーなど)を複合化することで発現することが明らかとなっている2)。この多孔質樹脂は,ワンポットの溶液反応により作製できるため,大きさや形状の制御も容易である。
固くて柔軟な多孔質樹脂は,大きな衝撃(力学エネルギー)を繰り返し吸収することが可能である。加えて,気孔率が高く,小さな細孔を豊富に包含しており,軽量かつ断熱性に優れるという特長(低熱伝導率:~30 mW m-1K-1)を有することから,自動車や航空機の衝撃吸収断熱材として有用であると考えられる。
今後,電子伝導性や光応答性といった機能性高分子をベースとする固くて柔軟な多孔質樹脂を開発することで,さらに幅広い分野への応用が期待される。
1) G. Hasegawa et al., Chem. Mater. 2016, 28, 3944.
2) G. Hasegawa et al., Chem. Mater. 2017, 29, 2122.
長谷川丈二 名古屋大学未来材料・システム研究所