アルコールは入手容易なことから化成品原料として幅広く用いられている。しかしながら,ヒドロキシ基を直接置換するためには,その脱離能の低さから強酸や高温などの過酷な条件を必要としていた。近年,Borrowing Hydrogen(BH)法と呼ばれる手法が注目されている1)。本手法は,原理的に共生成物が水のみという環境調和性に優れる点が特長である。BH法を用いたアルコール変換反応に対しては,貴金属触媒が主に報告されており,非貴金属触媒の報告例は限られていた。さらに,報告されている非貴金属触媒は強塩基の添加を必要とするなどの課題点が残されていた2)。
筆者らは,コバルト3)やマンガン4)担持触媒へMgOを共担持することで,強塩基の添加なしでもアルコール置換反応に対して高い触媒活性を示すことを報告している。既報においては外部塩基が縮合反応(BH法二段階目)を促進することから,MgOが塩基として作用し縮合反応を促進すると想定されたが,予想に反しコバルトやマンガンの酸化物と担体の協働作用により縮合反応が促進されることを明らかとした。最近,亜鉛,鉄などを用いた不均一系触媒も開発されており,持続可能性と活性を兼ね備えた不均一系非貴金属触媒開発が今後進むと期待される。
1) K. Shimizu, Catal. Sci. Technol. 2015, 5, 1412.
2) A. Corma et al., Chem. Rev. 2018, 118, 1410.
3) E. Suarsih et al., Catal. Sci. Technol. 2022, 12, 4113.
4) Y. Kita et al., ACS Catal. 2022, 12, 11767.
喜多祐介 大阪公立大学大学院工学研究科