日本化学会

閉じる

トップ >化学を知る・楽しむ >ディビジョン・トピックス >錯体化学・有機金属化学 >安定なプラスチック資源のケミカルリサイクルによるモノマー再生

安定なプラスチック資源のケミカルリサイクルによるモノマー再生

Monomer Regeneration by Chemical Recycling of Robust Plastic Resources

近年,炭素資源の効率利用を達成する研究開発が盛んである。中でも,プラスチックを「資源」として循環利用するケミカルリサイクルに注目が集まっている。実際に多くのプラスチックのケミカルリサイクル法が知られているが,ポリアミドなど安定な構造を持つプラスチックのケミカルリサイクルは容易ではなく,革新的な方法論が求められている。
2023年にY. Kratish,T. J. Marksらの研究グループは,tris[bis(trimethylsilyl)-amido]lanthanide錯体を触媒に用いると,ナイロン-6の解重合反応が進行し,単離収率90%以上,>95%の選択性でε-カプロラクタムを再生できることを報告した1)。ナイロン-6からε-カプロラクタムへの変換は,例えば,イオン液体とDMAPを触媒として用いる方法がA. Kamimuraらによって報告されているが2),本法は高収率,高選択であるだけでなく,240℃と低温,溶媒を必要としない条件のため,簡便にε-カプロラクタムを回収できる特徴がある。本法は,ポリマーのアミン末端から解重合が進行する。まずランタン錯体がポリマー末端のアミド基のカルボニル酸素に配位されたのち,N-H結合を切断する。この後,末端アミノ基とのプロトン交換を経て,解重合が進行する。
プラスチックなどの炭素資源の循環を担う研究開発は,今後の産業社会に急務である。例えば,筆者らは,耐熱性や耐薬品性に優れるスーパーエンジニアリングプラスチックを解重合し,モノマー型生成物への変換に成功している3, 4)

chem76-12-02.jpg
1) Y. Kratish, T. J. Marks et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2023, 62, e202212543.
2) A. Kamimura et al., Green Energy Environ. 2019, 4, 166.
3) Y. Minami et al., Commun. Chem. 2023, 6, 14.
4) Y. Minami et al., JACS Au 2023, 6, 2323.

南 安規 産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センター