日本化学会

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Co混合酸化物触媒による二酸化炭素の水素化反応

Carbon Dioxide Hydrogenation using Co Mixed Oxide Catalysts

炭素循環型社会の構築に向けて,CO2をCOとメタノールに水素化する反応が注目されている。この反応に有効な触媒として,酸素欠損部位を持つ金属酸化物が登場している1)。金属酸化物触媒上での反応において,CO2は酸素欠損部位に吸着され,金属原子上で解離したH2によって水素化され,ギ酸塩中間体となる。メタノールはギ酸塩の水素化によって生成し,COはギ酸塩の分解によって生成する。したがって,ギ酸塩の運命を制御することで,生成物の選択性を制御することができるいる2)
筆者らは,CO2の吸着とギ酸塩中間体の安定化に有効なCoドープZrO2触媒を研究した3)。Co-ZrO2混合金属酸化物のCoサイト近傍には,陽イオン間の電荷不均衡により酸素欠損が形成される。ギ酸塩はCo-Zr界面上で安定化され,Coサイトがブロックされるためそれ以上の水素化が阻止され,COが95%の選択率で得られた。
COからメタノールへの選択性の切り替えは,Coを含む二重原子のCo-In-ZrO2触媒の開発によって行われた4)。Coサイトはギ酸塩の安定化を担い,Inの役割はH2の解離であった。2つの触媒機能のサイトを分離することで,ギ酸塩の被毒効果が克服され,メタノール生成の活性化エネルギーが減少し,メタノール選択性が向上した。この研究は,CO2の優先的吸着と中間体の安定化に焦点を当てた,CO2水素化のための触媒設計の異なるアプローチを提示している。

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1) S. Kattel et al., JACS 2017, 139, 9739.
2) T. Chen et al., ACS Catal. 2019, 9, 8785.
3) N. H. Md. Dostagir et al., ACS Catal. 2021, 11, 9450.
4) N. H. Md. Dostagir et al., ChemRxiv 2023. doi: 10.26434/chemrxiv-2023-2nmx6

SHROTRI Abhijit 北海道大学触媒科学研究所