日本化学会

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光によって促進される電子触媒クロスカップリング反応

Electron-catalyzed Cross-coupling Reaction Accelerated by Light

遷移金属触媒を用いるアリール金属(Ar1-m)とハロゲン化アリール(X-Ar2)のクロスカップリング反応は,電子材料や医薬品において重要なビアリール(Ar1-Ar2)骨格を構築する汎用性の高い方法である。筆者らは,持続可能な社会の実現に向けて,遷移金属の代わりに電子が触媒として働くクロスカップリング反応の開発に取り組んできた(図1)1)。電子触媒は,Ar1-mからX-Ar2への一電子移動(SET)によって供給され(step a),生じたアニオンラジカル[X-Ar2・-がAr1-mと炭素-炭素結合形成反応を起こして[Ar1-Ar2・-に変換された後(step b),ここからX-Ar2へのSETによってAr1-Ar2が得られると同時に[X-Ar2・-が再生される(step c)。ここでは,この二段階のSETが遅いため,反応の進行には100 ℃以上の高温を要したが,最近になって筆者らは,有機光レドックス触媒(OPC)系から電子触媒を供給し(step d),またアニオンラジカル中間体を光励起する(step e)ことで,これらSETの段階を促進し,室温程度で反応を進行させることに成功した2)。光エネルギーを駆動力とするこの生産技術を様々な基質に適用することで,遷移金属に依存しない電子触媒クロスカップリング反応の汎用性がさらに高まると期待される。

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1) E. Shirakawa, in Science of Synthesis : Free Radicals : Fundamentals and Applications in Organic Synthesis, ed. by L. Fensterbank, C. Ollivier, Thieme, Stuttgart, 2021, pp. 135-158.
2) E. Shirakawa, M. Abe et al., Sci. Adv. 2023, 9, eadh3544.

白川英二 関西学院大学生命環境学部環境応用化学科