日本化学会

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液体の固体化

Transformation from Liquid to Solid

コロイド次元にある固体粒子は,粒子間力,界面自由エネルギー,媒体の流れを駆動力とする自己組織化,すなわち自律的方法によって省エネルギー型の機能性材料の創出を可能にし,現行の重力支配下におけるエネルギー消費型の材料創出,すなわち他律的方法を見直す機会を我々に与えてくれる。筆者らは,界面自由エネルギーを駆動力とする粒子の自律的な界面吸着現象に注目し,高分子粒子の気液分散体の安定化剤としての利用を提案している1~3)。粒子の素材として高分子材料を利用することで,無機材料では導入が困難である,多様性に富む刺激応答性,低温(<100℃)での成型性,フィルム形成能の導入が可能になる。
近年,筆者らは,高分子粒子が界面に吸着することで安定化した気中液滴型分散体である,リキッドマーブルおよびドライリキッドの安定化,構造評価および安定性制御に関する基礎研究を推進している。さらに,気中液滴型分散体を基盤とする新規機能性材料の開発研究を展開している。最近,粘着剤,ハチミツ等の粘稠液体の粉体化に成功し(図1),現在,企業と協同して社会実装に向けた検討を開始している。以上の研究成果について,2024年春に大阪工業大学梅田キャンパスで開催された生産技術・製品開発ディビジョン勉強会で発表し,産学両方の参加者から様々な貴重な意見を頂戴した。

chem77-06-02.jpgドライリキッド工学に基づき粉体化されたハチミツ


1) S. Fujii, Langmuir 2022, 38, 12757.
2) S. Fujii, Polym. J. 2019, 51, 1081.
3) S. Fujii et al., Adv. Funct. Mater. 2016, 26, 7206.

藤井秀司 大阪工業大学工学部応用化学科