日本化学会

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酸化鉄を負極と正極に用いたナトリウムイオン電池の構築

Na-Ion Battery Using NaFeO2 for Anode and Cathode

ナトリウムイオン電池は,ほぼ無尽蔵で安く入手できるナトリウムを用いるため,資源と価格の面で有利な次世代蓄電池である。これまでの研究では負極に酸化鉄とアンチモンの複合体を用いる検討を行っていたが1),本研究では酸化鉄の一種であるナトリウムフェライト(NaFeO2)を新たに検討した。層状岩塩型構造(α型)と六方最密構造(β型)のNaFeO2を負極として評価したところ,いずれの場合においても優れた電極性能が得られることを発見した。また,最初の充電時において不可逆的な相分離(2NaFeO2→Fe2O3+Na2O)が起こることを確認し,Fe-O結合が切断・再構築するコンバージョン反応に基づいて充放電が進むことを解明した。
正極においては,α型の層状構造の隙間にNaが出入りする反応(インサーション反応)が起こることが以前から知られていた。そこで,α型のNaFeO2を負極と正極の両方に用いたセルを構築した結果,可逆的に充放電させることに世界で初めて成功した2)。また,負極をβ型のNaFeO2に替えた場合にも同様に充放電することを確かめた。
本研究の成果は,資源豊富で安価な元素である鉄とナトリウムを用いて蓄電池を構築できる可能性を示すものであり,今後のナトリウムイオン電池の開発と普及に貢献することが期待される。

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1) H. Watanabe, H. Usui, Y. Domi, E. Iwama, H. Kurokawa, H. Sakaguchi, ACS Appl. Energy Mater. 2024, 7, 2973.
2) 戸田工業―鳥取大学 共同プレスリリース,https://ssl4.eir-parts.net/doc/4100/ir_material10/226427/00.pdf

薄井洋行 鳥取大学工学部化学バイオ系学科