日本化学会

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ヘアコンディショナーの使用感とαゲル構造の関係

Relationship between Feel of Hair Conditioner When Used and α-Gel Structure

市販されているヘアコンディショナーの多くは,カチオン界面活性剤/高級アルコール/水 混合系が形成するαゲル(α型水和結晶相+水相)構造を骨格にしている。このαゲル構造と製剤の使用感の関係を理解することは,製剤開発において重要な知見になることが期待される。
αゲル構造の違いが,ヘアコンディショナーを毛髪に塗布しているときの使用感に及ぼす影響を確認した。検討には,カチオン界面活性剤の中でも環境安全性に優れるN-[3-(dimethylamino)propyl]-docosanamide(APA-22)乳酸塩1, 2)/1-オクタデカノール(C18OH)/水の三成分系が形成するαゲルを用いた。
その結果,αゲルを水で希釈したときの粘度が高いものほど,塗布時にこってりとした濃厚な使用感を付与することが確認された。また,水希釈後の粘度はゲル構造内のαゲルドメインサイズに依存していることが明らかになった。αゲルドメインのサイズは,油脂の結晶成長理論と良い一致を示したことから,APA-22乳酸塩とC18OHの混合比を変えるなどの組成による制御だけではなく,αゲル調製時の冷却速度や攪拌速度を変えることで,αゲルドメインサイズを変化させ,使用感の制御が可能になる3, 4)
ほかのカチオン界面活性剤を用いて調製されたαゲルにおいても同様の傾向があることが確認されたことから,これら一連の研究で得られた知見は,様々なαゲルの構造・物性制御に適応できることが期待される。

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1) T. Yamane et al., J. Oleo Sci. 2008, 57, 529.
2) T. Sakai et al., J. Oleo Sci. 2008, 57, 521.
3) T. Saito et al., J. Oleo Sci. 2020, 69, 1403.
4) T. Saito et al., J. Oleo Sci. 2020, 69, 1561.

齋藤隆儀  花王株式会社