日本化学会

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不斉リモート炭素(sp3)-水素アリール化

Asymmetric, Remote C(sp3)-H Arylation via Sulfinyl-Smiles Rearrangement

リモート官能基化1)は反応全体の廃棄物生成量が少なく,持続可能で効率的な化学プロセスである。近年,従来のオレフィン異性化を用いた方法とは異なる新しいアプローチのリモート官能基化が続々と報告されている。
Nevadoらは,スルフィニル-Smiles転位を用いた不斉リモート炭素(sp3)-水素アリール化を開発した2)。本反応は,ハロゲン化アルキルと光レドックス触媒を用いることで,二重結合への炭素ラジカルの付加,1,n-水素原子移動(HAT)を介した位置選択的ラジカル転位および立体制御されたアリール移動によって進行し,光学活性α-アリール化アミドを高い収率およびエナンチオ選択性(最大で>99 : 1に達する)で合成することができる。メカニズム研究の結果,スルフィナミド基が生成物の立体化学を制御するのに重要であり,アリール移動が律速段階であることが明らかになった。本反応は,複雑な光学活性有機化合物の合成に応用できると考えられる。

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1) I. Marek et al., Nat. Synth. 2022, 1, 37.
2) C. Nevado et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2024, 63, e202319158.

有澤光弘  大阪大学大学院薬学研究科