太陽光に多く含まれる可視光の有効利用が望まれている。そのような観点から近年,金属ナノ構造への可視光照射によって光をナノ空間に局在させることが可能となる局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance : LSPR)が注目されている。LSPRが励起した際に形成する局所電場空間内では,通常の光照射下では見られない興味深い光応答が観測される1)。LSPRの緩和過程において,金属ナノ構造中には電子正孔対が形成する。この特性を利用し,ワイドバンドギャップ半導体にプラズモニック構造を担持することで半導体電極に可視光応答能の付与が可能である。プラズモニック光電変換電極として知られる当該系において,これまでに筆者らは,n型酸化チタン(TiO2)電極とAuナノ構造から成る光アノード電極系に関して,反応を誘起する励起された正孔がもつ(電気化学)電位を,導電性高分子の酸化重合反応を通じて明らかにしてきた2)。
最近筆者らは,p型半導体電極を用いたプラズモニックカソード電極系の確立に取り組んでいる。例えば,p型GaP表面にAgナノ構造を担持することで可視光誘起水素発生系を確立した3)。さらに同系において,多色応答を示すAuナノロッド構造を用いた場合,その応答波長に依存して励起電子の電位が変化することを,励起電子によるMnやCuといった金属の光還元析出反応を利用することで明らかにした。加えて,同一の金属ナノ構造でも,担持する半導体を変えた場合に,励起電子の電位がシフトすることを見いだした(図)4)。これは,励起エネルギーが同一の場合であっても正孔注入が起こるフラットバンド電位が半導体によって異なるために,電子が到達し得る電位が異なるためである。以上の知見は,将来の水分解やCO2還元等の様々な反応制御に向けた電極設計指針に繋がると期待される。
1) H. Minamimoto et al., Acc. Chem. Res. 2022, 55, 809.
2) H. Minamimoto et al., J. Phys. Chem. C 2016, 120, 16051.
3) H. Minamimoto et al., Chem. Lett. 2020, 49, 806.
4) H. Minamimoto et al., J. Phys. Chem. C 2024, 128, 12339.
南本大穂 神戸大学大学院工学研究科