トリプタミン由来の三環性酸化型骨格であるピロロイミノキノン(PIQ)を有する天然物は顕著な抗腫瘍活性を示す一方,抗マラリア活性の報告は少ない1)。Vanderwalらは合成終盤(late-stage)におけるPIQ 1の位置選択的N-メチル化を鍵とする天然物と誘導体の発散的合成法を開発し,抗マラリア活性の構造活性相関を報告した2)。
筆者らは,はじめにLarockインドール合成法によるPIQ 1の大量合成法(>10 g)を開発し,1のピロールおよびイミン部のN-メチル化によりPIQ 2-4へ誘導した。本合成はインドールなどの還元型誘導体をN-メチル化した後にPIQへ酸化する従来法に比べ効率性に優れ,多様なN-メチル誘導体の迅速合成を可能にした。その後,PIQ 2-4は天然物12種,類縁体13種を含む25種のライブラリー(いずれも最長直線経路8工程以内)へ誘導された。そして本ライブラリーを用いたクロロキン感受性熱帯性マラリア原虫3D7株と耐性Dd2株に対する抗マラリア活性評価とヒト由来細胞株に対する殺細胞活性評価が行われた結果,トリプタミン側鎖を持つ誘導体6など,イミン部のみがメチル化された誘導体で抗マラリア活性と選択性が向上し,PIQのN-メチル化様式の重要性が示された。今後,本合成を基盤とした抗マラリアリードの創出が期待される。
1) J.-C. J. Kalinski et al., Molecules. 2022, 27, 8724.
2) C. D. Vanderwal et al., J. Am. Chem. Soc. 2024, 146, 29883.
坂田樹理 東北大学大学院薬学研究科