日本化学会

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シカゴで学んだこと

What I Learned in Chicago

アメリカの大学院を目指したのは,純粋な好奇心からでした。学部時代,京都大学の辻研究室で研究を進める中で,ほかの人とは異なる新たな環境に挑戦したいと思うようになり,辻康之先生,寺尾潤先生,藤原哲晶先生の温かいご支援のおかげで,シカゴ大学への進学が実現しました。
入学後は,入学金や授業料が免除されるだけでなく,給与も支給される恵まれた環境の中で,山本尚先生のご指導の下,自立しながら大好きな研究に打ち込むことができました。一方で,シカゴでの生活は決して容易ではなく,治安や食事,気候など,様々な困難にも直面しました。それでも,日本人ポスドクの皆様をはじめとする周囲の温かい支えのおかげで,約4年で無事にPh.D.を取得することができました。
アメリカの大学院では,念願だった教育プログラム(TA,昇級試験など)を体験し,多民族国家ならではの多様なバックグラウンドを持つ友人たちと出会うなど,多くの貴重な経験を得ることができました。これらを通じて,新しい環境に挑戦する心理的ハードルが下がったことは,大きな収穫だと感じています。
帰国後は,関西学院大学で博士研究員・助教として勤務した後,2023年春より東洋大学に准教授(独立PI)として着任しました。研究人生の岐路に立たされた際,打算を超えて「今,自分にとって最善の選択」をする判断力は,アメリカでの留学経験に支えられてきたと確信しています。メリットやデメリットを挙げればきりがありませんが,興味があるなら,それだけで十分な理由になると筆者は思います。留学が特別なものではなく,自然な選択肢の1つとして受け入れられていくことを願っています。

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小田 晋  東洋大学理工学部応用化学科