近年,分子変換型の光触媒開発において,反応選択性に優れた金属錯体を活性中心とし,光伝導性を有する半導体固体材料と連結した複合型光触媒が注目されている1)。このような複合型光触媒においては,光伝導性材料中に生成した正および負の電荷キャリアを,それぞれ酸化および還元反応中心へ方向選択的に移動させる設計が,高効率化,ひいては水を電子源とした人工光合成反応の実現に不可欠であると考えられる。
最近,筆者らは光伝導性を有するドナーアクセプター型の共役系高分子に,錯体触媒を内蔵した光触媒を各分子ビルディングブロックから組み上げる手法を開拓している。アクセプター部位として錯体触媒を選択的に修飾可能なビピリジン配位子を導入することで選択的なCO2還元光触媒活性の発現に成功し2),π共役鎖間の電荷移動の制御による高活性化も報告している3)。さらに適切なπスペーサー導入により,エネルギーカスケード構造を通じた方向選択的電荷移動を実現し,量子収率32.2%の高効率CO2還元を実証した4)。CO2還元触媒に加えて,水の酸化触媒を位置・機能選択的に導入する手法も開発した5)。
今後,このような分子レベルでの機能統合を可能にする光触媒設計を通じ,水を電子源としたCO2還元などの高効率な人工光合成反応の実現が期待される。
1)A. Nakada et al., Acc. Chem. Res 2021, 10, 19821.
2)A. Nakada et al., J. Mater. Chem. A 2022, 10, 19821.
3)A. Nakada et al., Sustain. Energy Fuels 2025, 9, 2941.
4)A. Nakada et al., J. Am. Chem. Soc. 2025, 147, 20759.
5)A. Nakada et al., J. Mater. Chem. A 2024, 12, 30279.
中田明伸 京都大学大学院工学研究科