ナノ粒子が規則的に最密充填した集合体(超格子)を形成すると,近接粒子間の相互作用により協奏的物性が発現すると期待される。広範な無機物質からなるナノ粒子超格子を得られる迅速で汎用性の高い手法が確立されれば,これまで未開拓だった超格子の網羅的な機能評価が可能となる。
最近,ナノ粒子合成中に成長したナノ粒子が,増加したファンデルワールス(vdW)引力によって反応液相中で自己集合し三次元超格子が自発的に生成する系がいくつか見つかっている1~4)。物質普遍的に存在するvdW引力を駆動力としているため,あらゆる物質のナノ粒子に適用できる汎用的なアプローチである。実際に,Pd,Fe,Niなどの金属,PbS,Cu2Sなどのイオン結晶からなる三次元ナノ粒子超格子の形成が報告されている。また,放射光を利用することで液相中の分散ナノ粒子からの散乱と超格子の周期構造由来の回折が検出可能であり,ナノ粒子の核形成から集合までの過程をリアルタイムで観測することも可能になっている。今後物質のバリエーションや個々の粒子形状制御などにより,多様な構造の超格子が得られれば,様々な分野において新しいタイプの物質群としての展開が期待できる。
1) C. J. Tassone et al., Nature 2017, 548, 197.
2) M. Saruyama et al., J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 5871.
3) M. Saruyama et al., Chem. Sci. 2024, 5, 182.
4) M. Saruyama et al., Nano Res. 2025, 18, 94907284.
猿山雅亮 京都大学化学研究所