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光や電気をエネルギー源として二酸化炭素を選択的に還元するための触媒開発

Development of Catalysts for the Selective Reduction of Carbon Dioxide using Light or Electricity as an Energy Source

カーボンニュートラリティの実現に向けて,二酸化炭素(以下,CO2)の排出量を低減させることも重要であるが,再生可能エネルギーをエネルギー源として,一度排出されたCO2を再び利用できる化合物に変換できれば,本質的なCO2削減に貢献することができる。筆者らは,光エネルギーもしくは電気エネルギーを用いてCO2を還元する光触媒反応(図a)と電解反応(図b)の高性能化を目指して,触媒開発を進めている。光触媒反応の場合には,光照射によって生じた励起電子が伝導帯下端(CBM)から助触媒(co-catalyst)に移動し,助触媒上でCO2が還元されると考えられる。そのため,高性能化には助触媒の精密設計が重要である。一方,電解反応の場合には,電源装置からカソードに電子が注入されCO2還元が進行する。したがって,光触媒反応における助触媒開発と,電解反応におけるカソード触媒開発は,非常に似通った設計指針の下で進めることができる。どちらの場合も,注入された電子を選択的にCO2還元に用いるために,競争的に進行するH2生成を抑制することが必要である。筆者らは,超音波還元法によりAg助触媒を担持し,さらに助触媒表面をCr種で被覆すると,CO2光還元活性が飛躍的に向上することを報告した1)。また,14員環型ヘキサアザCo錯体がCO2電解還元に優れた性能を示し,低濃度CO2をカソードに供給した場合にも,H2生成よりもCO2還元が優先して進行することを報告した2)。今後は,双方で得られた知見を相補的に組み合わせ,CO2還元の高性能化を実現したいと考えている。


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1)    K. Kawata et al., ACS Catalysis 2025, 15, 4081.
2)    T. Inada et al., Catal. Sci. Technol. 2024, 14, 391.

井口翔之  京都大学大学院工学研究科