規則性多孔質材料であるゼオライトは,工業的に触媒や吸着材として用いられ,近年は,二酸化炭素やバイオマスの変換,ポリマーのケミカルリサイクルなど,炭素循環に関わる反応に関連してその注目度が増している。目的の特性を持つゼオライトを合理的に設計するためには,その水熱合成過程(結晶化挙動)を深く理解する必要がある。今日までに行われた合成中間体の解析や結晶化過程の in-situ 分析から,ゼオライトの結晶化は多数の中間体が関与する多段的なプロセスであると理解されている1)。一方で,いまだゼオライト結晶化の全容は明らかではなく,特に,中間体の分子レベルの構造情報に乏しい。また,触媒として用いられるゼオライトの合成条件と比較して温和な条件(濃度が希薄かつ低温)でメカニズム解析が実施され,得られるゼオライトの構造・触媒特性情報も十分ではない。
この観点から最近,結晶化過程における中間体の分子構造,得られたゼオライトの構造,触媒特性を一貫して調査する試みがなされた2, 3)。特殊な出発原料を用いて,小細孔ゼオライトを異なる結晶化過程を経て合成し,排ガス浄化反応(NH3によるNOxの選択的還元)に適用するとともに,質量分析を取り入れた多角的な手法で合成中間体の解析が行われた。結果として,結晶化過程におけるアルミノシリケートオリゴマーの構造分布や種結晶の分解挙動が,高い触媒耐久性の要因である特異なAl分布の生成や欠陥量の低減に関与していると結論付けられた。
1) A. J. Mallette et al., Chem. Rev. 2024, 124, 3416.
2) N. Tsunoji et al., Chem. Mater. 2020, 32, 60.
3) N. Tsunoji et al., ChemCatChem 2024, 32, e202400459.
津野地 直 鳥取大学工学部化学バイオ系学科