人間活動によるCO2の排出量増加により地球温暖化や海洋酸性化が進行し,生物多様性の高いサンゴ礁を含む海洋生態系に深刻な脅威を与えている1)。サンゴ礁の維持にはCaCO3の生成と溶解のバランスが重要である。特にサンゴ礁生態系内で広範囲を占め,海洋酸性化の影響を受けやすい砂質堆積物の溶解メカニズムを解明することが急務であるが,従来のガラス電極式pHセンサでは,堆積物内のpHの時空間分布を連続的かつ長期間測定することが困難であった。
この問題を解決するために,筆者らはTa2O5を感応膜とするイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)アレイpHセンサを開発し,これを堆積物内に埋設することにより,高解像度かつ長期間のpHモニタリングを可能にした2)。
サンゴ礁堆積物中で24時間のpHモニタリング試験の実施および室内実験とフィールド観測の両方で評価したセンサの性能を従来のガラス電極式pHセンサと比較した結果,本センサを用いて安定したpH測定を実施できることが確認された。また,開発したISFETアレイpHセンサは,高価で壊れやすく長期モニタリングに適さない従来のガラス電極式pHセンサの代替となり得る低コストかつ耐久性の高いpHセンサである。しかし,さらなる測定精度の向上のためには,感応膜のスパッタ条件やアニール処理の最適化および測定環境の影響を補正するデータ処理技術の導入が必要である。
本研究で提案したISFETアレイpHセンサを用いる観測手法により,高解像度の鉛直pHプロファイルの取得が可能となるので,本センサは砂質堆積物の化学的役割の定量的評価やサンゴ礁生態系における炭素循環の解明に大きく貢献すると期待される。
1) K. J. Kroeker et al., Glob. Change Biol. 2013, 19, 1884.
2) Y. Ogawa et al., Limnol. Oceanogr.:Methods 2025, 23, 624.
中嶋 秀 東京都立大学大学院都市環境科学研究科
山本将史 東京都立大学大学院都市環境科学研究科
茅根 創 東京大学大学院工学系研究科