日本化学会

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金属炭化物微粒子触媒の活性発現機構の理解の深化

Deepening the Understanding of Catalytic Activity in Metal Carbide Nanoparticle Catalysts

理論計算手法の進歩により,様々な実在化合物の電子状態や構造,物性などが第一原理的に明らかにされるようになってきた1)。その結果,「理論計算」と「実験」の両面からメカニズムを解明し,新たな材料設計へとつなげることを目的とした共同研究が活発化している。本稿ではこの一例として,金属炭化物微粒子の触媒活性に関する理論と実験の共同研究を紹介する。炭化ニッケル微粒子は,水素発生や水素化反応において,特定の条件下で白金をも凌駕する高い触媒活性を示すことが知られている2)。一方で,この化合物中の炭素の電子状態については,これまで詳細には明らかにされてこなかった。最近になって,密度汎関数理論に基づく研究により,その電子状態が明らかとなった3, 4)。具体的には,炭化ニッケルは,①共有結合性,②イオン結合性,③金属性の3種類のバンドを有し,表面準位を形成するのは共有結合性バンドであること,さらに,この炭素は一般的なspn混成軌道を形成せず,p軌道としての性質を強く保持していること,そして反応中のC-Ni,C-H間には共有結合が形成されること(図)が示された。これらの理論的知見は,実験的に観測されている高い触媒活性をよく説明しており,また,炭化ニッケルの触媒作用を理解する上で,炭素を含む共有結合的相互作用の検討が重要であることを示唆している。このp軌道によるC-Ni/H共有結合という概念は,金属炭化物触媒の活性発現機構の解明のみならず,新規触媒開発に向けた設計指針の構築にも大きく寄与すると期待される。

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    1)    北河康隆ほか,フロンティア 2020, 2, 66.
    2)    X. Fan et al., ACS Nano 2015, 9, 7470.
    3)    S. Yamaguchi et al., Chem.-A Eur. J. 2024, 30, e202303573.
    4)    K. Tada et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 2026, 28, 1118.

北河康隆  大阪大学大学院基礎工学研究科