我が国の資源セキュリティを確保するためには,希少金属元素(レアメタル)を迅速簡便かつ高効率にリサイクルする技術の確立が不可欠であるが,既存の分離手法は長時間・多段の化学操作が必要で二次廃棄物が生成する等の課題がある。そこで筆者らは,温度応答性ポリマーの相転移特性を活用した温度スイング型分離法の開発を進めている。
Poly(N-isopropylacrylamide)[poly(NIPAAm)]等の温度応答性ポリマーとfブロック元素の配位サイトとなり得るモノマーとの共重合ポリマーをシリカ粒子表面等に固定化した"ポリマーブラシ吸着材"を創製した。ポリマーの相転移温度以下にて溶液中のランタノイドイオン(Ln3+)を選択的に吸着させた後,温度を人肌程度に上げるだけでLn3+を脱離回収させることに成功した1, 2)。
レアメタル含有廃液にpoly(NIPAAm)と疎水性抽出剤とを投入して攪拌し,ポリマーの相転移温度前後に溶液温度をスイングするだけで,poly(NIPAAm)をゲル状態へ変化させ,そのゲル内に金属錯体として分離回収することも実現した。抽出剤の選択により,Ln3+や白金族イオン(Pd2+, Rh3+, Ru3+)等,様々なレアメタルに適用できる3, 4)。回収したpoly(NIPAAm)ゲル化物は冷水に浸すだけで水に再溶解するため,逆抽出操作も容易である。
作業・環境負荷低減に資する新しい分離手法として,さらなる発展が期待される。
1) T. S. W. Tan et al., RSC Appl. Poly. 2026. doi: 10.1039/D5LP00239G
2) K. C. Park et al., React. Chem. Eng. 2018, 3, 48.
3) K. C. Park et al., React. Funct. Polym. 2014, 79, 36.
4) K. Saga et al., Anal. Sci. 2019, 35, 4661.
塚原剛彦 東京科学大学総合研究院