次期学習指導要領の検討が進む中,化学教育においては,小・中・高を通じた体系の構築が重要な課題となっている。日本化学会化学教育カリキュラム構築小委員会は,粒子概念と電気化学を中心に,概念の往還を軸とした体系的な学びの在り方を整理し,中間報告として取りまとめた。本稿では,その要点を紹介する。
化学は,目に見える現象の観察から出発し,粒子モデルによる説明,さらに定量的理解へと発展する学問である。この流れを教育において段階性に構築することが体系性の基盤となる。粒子概念については,小学校では状態変化や溶解などをマクロに捉える経験を重視し,中学校では原子・分子・イオンを導入することで,学習者が現象を粒子の再配置として説明する枠組みを形成できるようにする。高等学校では電子配置や結合,分子間力を通して粒子概念を構造的・定量的に深化させ,マクロとミクロを往還しながら理解を統合する。この段階的構成を踏まえない早期導入は誤概念の固定化を招く可能性がある。
電気化学については,「現象―粒子―エネルギー」という共通軸で整理し,電池と電解を対概念として扱う視点が示された。中学校では電流の流れや電極での物質生成からイオンの存在を理解し,高等学校では酸化還元反応の向きやエネルギー条件を理論的に捉え直す。電池は自発的反応によるエネルギーの取り出し,電解は外部エネルギーによる反応駆動という対照的な関係にあり,両者を往還的に理解することで,化学反応とエネルギー概念の統合的理解が可能となる。
教育課程の検討にあたっては,学問体系との整合性,発達段階に応じた粒子概念の扱い,実験経験の役割を丁寧に考慮する必要がある。体系性が一度弱まると回復に長い時間を要することは,過去における教育内容再編の歴史が示している。学問体系・科学史・実践知が相互に補完し合う化学教育の特性を踏まえ,縦の流れと往還的理解を基盤とした体系構築を進めることが,次期学習指導要領に向けた重要な視点である。
日本化学会 教育普及部門 学校教育委員会化学教育カリキュラム構築小委員会