二酸化炭素(CO2)を温和な条件で固定・放出する技術の開発は,カーボンニュートラル社会実現の鍵を握る1)。金属炭酸塩は,高いCO2含有率を示し,可逆的な固定・放出が可能である。一方で,CO2放出には400℃以上の高温を必要とする。これは炭酸イオン(CO32-)が強固なイオン結合によって固体中に固定されているためである。
この課題を解決するために,筆者らはCO32-を固定する手法として配位結合に着目した。配位結合は金属イオンと配位子の組み合わせによって結合エネルギーを幅広く調節できる。特に配位高分子(Coordination Polymer,以下CP)は,配位環境を自在に設計できることから,CO32-を固定する場として有望である2)。金属イオンと有機分子を共存させることで,常温・常圧下でCO2をCO32-へと変換し,CO32-含有CPとして固定した。得られたCPは170~230℃でCO2を放出し,その放出温度と金属イオンの電気陰性度やCO32-の配位数の相関関係を明らかにした。CO2放出に伴いCPは分子性単核錯体へと構造変換し,液相でのCO2固定によって元のCPへ戻った(図1)3)。
このように,CPをCO32-の反応性を制御する場として活用することで,従来の金属炭酸塩よりも低温でのCO2放出を実現した。今後,配位環境の設計によってより温和な条件でCO2固定・放出を実現できる材料の開発が期待される。
1) M. Zanatta, ACS Mater. Au 2023, 3, 576.
2) K. Kadota et al., Acc. Chem. Res. 2024, 57, 3206.
3) K. Kadota et al., J. Am. Chem. Soc. 2025, 147, 30022.
門田健太郎 京都大学大学院理学研究科