核磁気共鳴イメージング(MRI)に,感度を飛躍的に高める動的核偏極法(DNP)を組み合わせたDNP-MRIは,生体内酵素活性を非侵襲的に可視化できる技術として注目されている。一方で,従来のDNP-MRI分子プローブの多くは天然化合物の同位体標識体に依存しており,標的とできる酵素種には制約があった1)。これに対し筆者らは,標的酵素の多様化を目的として,DNP-MRI分子プローブの合理的設計に取り組んできた。これまでに,生体内アミノペプチダーゼN活性を検出可能な分子プローブAla-[1-13C]Gly-d2-NMe2を開発している2)。このプローブは,長い超偏極寿命や高い酵素反応性など,in vivo DNP-MRI検出に求められる要件を満たす。今回は,この骨格を基盤として構造展開を行い,複数のアミノペプチダーゼ活性を同時検出可能なDNP-MRI分子プローブ群を開発した3)。各分子プローブには異なる酵素認識部位を導入し,化学シフトの差異により同時検出が可能となるように設計した。実際,これらのプローブ群を用いることで,4種類の分子プローブ代謝を生体内で同時検出することに成功した。さらに,担がんマウスモデルでの検討により,抗がん剤の治療効果モニタリングや,がん種の識別診断への応用可能性が示された。
1) Y. Kondo et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2021, 60, 14779.
2) Y. Saito et al., Sci. Adv. 2022, 8, eabj2667.
3) H. Yatabe et al., J. Am. Chem. Soc. 2026, 148, 9296.
谷田部浩行 東京大学大学院工学系研究科