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ニッケル依存性酵素が担うスルホンアミド形成機構の解明

Elucidation of Nickel-dependent Enzymatic Sulfonamide Formation

スルホンアミド基は,抗菌薬や抗がん剤,農薬など多様な生理活性分子に見られる重要な官能基であり,分子の安定性や標的分子との相互作用に大きく関与する。一方で,自然界においてスルホンアミド基を有する天然物は限られており,その生合成機構はほとんど解明されていなかった。筆者らは,放線菌が生産する天然物アルテミシジンの生合成に関与するスルホンアミド合成酵素SbzMに着目し,その構造・機能・反応機構を解析した1, 2)。X線結晶構造解析,生化学実験,安定同位体標識,分光学的解析,計算化学を組み合わせた結果,SbzMは既知の鉄依存性システイン酸化酵素とは異なり,ニッケルイオンを選択的に利用してL-システインからスルホンアミド構造を形成する新奇酵素であることが明らかとなった3)。特に,本酵素はNi2+/Ni3+酸化還元サイクルと2分子の酸素を用い,脱炭酸と硫黄酸化を段階的に進行させることでスルホンアミド基を構築する。これは,金属元素の違いが酵素反応経路を大きく変化させることを示す重要な例であり,天然物生合成における金属酵素反応の多様性を理解する上で新たな知見を与えるものであった。今後,類縁酵素の開拓,機能解析,酵素工学的改変等を通じて,多様なスルホンアミド含有化合物の生合成機構の解明や,酵素的合成へと展開していくことが期待される。

chem79-09-03.jpg    1)    Z. Hu et al., Nat. Commun. 2019, 10, 184.
    2)    L. Barra et al, Nature 2021, 600, 754
    3)    Y. Zhu et al., Nat. Catal. 2026, 9, 295.

森 貴裕   東京大学大学院薬学系研究科