日本化学会

閉じる

トップ >化学を知る・楽しむ >ディビジョン・トピックス >コロイド・界面化学 >ライフケア・ヘルスケアの向上を目指したバイオフィルム制御研究

ライフケア・ヘルスケアの向上を目指したバイオフィルム制御研究

Biofilm Control for Lifecare and Healthcare

筆者らは,ライフケアやヘルスケアの分野において重要なバイオフィルムを制御するための取り組みを行っている。微生物の付着抑制からバイオフィルムの成長阻害,生成したバイオフィルムの除去という様々な角度からの制御を目指しているが,予防という観点も含め,微生物の殺菌も非常に重要な要素である。
筆者らはグラム陰性菌に対してカチオン性界面活性剤である塩化ベンザルコニウム(BAC:図1a)と芳香族アルコール(BzA:図1b)の組み合わせが高い殺菌性能を有していることを見いだしている1)。この殺菌技術に対して,グローバル化に伴う法規制への対応やコストパフォーマンスに優れた代替基剤の提案などにつながる知見を得るために,この作用機序の解明に取り組んでいる。
グラム陰性菌の最外層に存在するリポ多糖に対する殺菌剤の作用について注目している。リポ多糖はCa2+イオンによって安定化しており,Ca2+イオンによって安定化されたリポ多糖膜に対してはBACのみでは膜構造の変化を引き起こさないが,BzAを併用することにより膜構造を破壊していることをX線反射率(XRR)と斜入射X線蛍光(GIXF)の同時計測のデータから見いだした2)。さらに等温滴定型カロリメトリー(ITC)や水晶振動子マイクロバランス法(QCM-D)の結果から,熱力学や物性変化の側面からもBACとBzAの相乗効果が確認できた3)

chem79-09-06.jpg図1 化学構造(a)塩化ベンザルコニウム(BAC),
(b)ベンジルアルコール(BzA),(c)大腸菌由来リポ多糖(LPS)

Reproduced with permission from Ref. 3)

    1)    T. Yano et al., Appl. Environ. Microbiol. 2016, 82, 402.
    2)    J. Thomae et al., Sci. Rep. 2020, 10, 12302.
    3)    I. Furikado et al., Langmuir 2023, 39, 8523.

振角一平  花王株式会社