電気化学発光(Electrochemiluminescence, ECL)は,電気化学反応を駆動力とした発光現象である。蛍光法とよく比較されるが,蛍光測定におけるバックグラウンドノイズの原因となる励起光が不要なため,ECLを利用した高感度アッセイが可能である。現在,ECL試薬をタグとして使ったイムノアッセイキットが市販されている。
ECLを用いた新規手法として,電気化学反応が電極界面近傍のみで起こるという特性を利用したイメージング法が開発されている。この技術では,電極上に電極反応を阻害するものが存在すると,その部分だけが影としてECLイメージに現れることを利用しており,Shadow ECLイメージングと呼ばれている。例えば,絶縁体である細胞を電極上で培養すると,その形状が影として現れる。一方で,細胞間の隙間はECL物質(例:[Ru(bpy)3]2+)が通過できるため,ECLイメージでは細胞間の隙間が発光して見える1)。このシグナルを解析することで,非標識で細胞間結合の程度を可視化できる。
細胞間結合だけでなく,細胞-足場(電極)間の相互作用(接着力)も可視化できる。これは,相互作用に応じて,その隙間にECL試薬が入り込む量が変わるからである。この原理を用いてT細胞とT細胞レセプターを固定化した電極との相互作用を可視化できている2)。
このように,電極界面の状態を発光シグナルに置き換えてサンプルの「影」を見ることで,様々なバイオイメージングが可能になっている。ナノスケールのShadow ECLイメージングも可能となっており3),今後のさらなる発展が期待されている。
1) H. Ding et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2021, 60, 11769.
2) Y. Yan et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2023, 62, e202314588.
3) X. Gou et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2026, 65, e21654.
伊野浩介 東北大学大学院工学研究科