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空気中で安定な遷移金属錯体による精密配位重合

Controlled Coordination Polymerization with Bench-Stable Transition Metal Complexes

遷移金属錯体を触媒とする不飽和炭化水素類の精密重合(リビング重合)では,分子量や末端構造を精密に制御した高分子を合成することができる。近年では,モノマーの適用範囲が広がり,多様な高分子材料の開発が進められている。
 最近,Noonan,Coates,Forsらの研究グループは,(Ad3P)Pd(Me)Cl(Ad = adamantyl)とAgSbF6から発生させた(Ad3P)Pd(Me)SbF6が空気中で極めて安定なカチオン性パラジウム(II)錯体として単離可能であり,ノルボルネン誘導体の精密配位重合を進行させることを報告した(図)1)。この重合では,空気下でも優れたリビング性を示し,モノマー/開始剤の仕込み比に対応した分子量と狭い分子量分布を有するポリノルボルネン誘導体を定量的に与える点で,従来の触媒系に比して大きな優位性を有する2)。また,様々な極性化合物の存在下においても精密重合が円滑に進行し,本錯体の高い官能基許容性が示された。
このように,真に実用的な精密配位重合を実現するためには,高い反応性と優れた安定性を兼ね備えた遷移金属錯体を重合開始剤として設計することが不可欠である。筆者らも,空気中で安定でありながら,置換ポリアセチレン誘導体の分子量,立体規則性および末端構造を精密制御できる重合開始剤として,1,3,5-ヘキサトリエニルロジウム(I)錯体を開発している3)。今後も,新たな錯体設計指針の下,より使いやすい精密重合技術の開発が一層進展することが期待される。

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    1)    K. J. T. Noonan, G. W. Coates, B. P. Fors et al., J. Am. Chem. Soc. 2025, 147, 40676.
    2)    M. V. Bermeshev et al., Prog. Polym. Sci. 2018, 84, 1.
    3)    T. Taniguchi, K. Maeda et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2021, 60, 22201.

谷口剛史  産業技術総合研究所触媒化学研究部門