光誘起電荷生成は,太陽電池や人工光合成,蓄光材料などの重要な初期過程である。有機材料では主に電子ドナー・アクセプター間(D/A)の電荷分離を対象として,過渡吸収分光,電子スピン共鳴,光電流測定などにより研究されてきた。一方,多光子過程を利用すればD/A界面がなくても電荷を生成できるが,その生成量は少なく,特に逐次的な多光子過程を従来法で検出することは容易ではない。
本研究では,有機材料中に蓄積した電荷の再結合発光がべき乗則型の減衰を示すことに着目し1),広い時間領域にわたる「遅い過渡発光分光」により,微量な電荷生成を検出した2)。発光材料NPDをD/A界面を形成可能なTRZ-SO2に分散し,光励起した場合,電荷移動(CT)を介した電荷分離・蓄積・再結合によりCT励起状態よりべき乗発光減衰が得られた。
一方,D/A界面を持たないPMMA分散膜でも,長時間の光励起によりNPDの励起状態からべき乗発光減衰が得られた。これは蓄積した三重項励起状態を介した多光子イオン化および電荷蓄積・再結合に起因する。このような逐次的な多光子プロセスの確率はD/A界面に比べて極めて低いものの,固体状態では持続的な光照射により微量の電荷が蓄積し得る。本手法は,従来法では見落とされやすい副次的な光イオン化過程の分析手段となる。
1) R. Kabe et al., Nature 2017, 550, 384.
2) R. Oyama et al., Sci. Adv. 2025, 11, eadx9806.
嘉部量太 沖縄科学技術大学院大学