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セルロースナノファイバーシートを用いた唾液中細胞外小胞由来microRNA解析

Salivary Extracellular Vesicle-Derived microRNA Analysis using a Cellulose Nanofiber Sheet

がんの早期発見や健康状態のモニタリングに向けて,血液や尿などの体液を用いるリキッドバイオプシーが注目されている1)。中でも唾液は,非侵襲的かつ簡便に繰り返し採取できることから,日常的なモニタリングに適した検体である。唾液中には,細胞から分泌される細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EVs)が含まれ,その内部のmicroRNAは疾患状態を反映するバイオマーカーとして期待されている。一方,従来のEV分離法では長時間の処理や大型装置を必要とし,日常的な解析への応用には課題があった。
筆者らは,セルロースナノファイバー(cellulose nanofiber; CNF)からなるシートを用いた簡便な唾液中EV解析法を開発した(図1)2)。CNFシート内部にはEVと同程度のサイズの細孔ネットワークが形成されており,10 μLの唾液を滴下することでEVを効率良く捕捉できる。さらに,唾液を滴下したシートを乾燥させることでEV由来microRNAを室温で安定に保存でき,超遠心法と比較して高いmicroRNA回収性能を示した。
本手法を用いて,健常者,肺がん患者および胃がん患者の唾液中EVを回収し,microRNAを解析したところ,がん患者では健常者とは異なるmicroRNA発現パターンが得られた。本手法は,「唾液をシートに滴下して乾燥する」という簡便な操作で試料を保存できることから,将来的には自宅での検体採取や日常的ながんリスクモニタリングなど,個別化医療・予防医療への応用が期待される。

chem79-11-04.jpg図1 CNFシートを用いたEV由来microRNA解析イメージ図


    1)    E. Heitzer et al., NPJ Precis. Oncol. 2017, 1, 36.
    2)    T. Ajiri et al., Biosens. Bioelectron. 2026, 299, 118436.

阿尻大雅  名古屋大学大学院工学研究科