全固体リチウムイオン電池は,従来のリチウムイオン電池と比較して高安全・高出力・高エネルギー密度化が狙えるが,固体電解質と電極活物質の界面形成とその維持に課題がある。
酸化物系固体電解質を用いる場合,高温焼結が必須であり,その過程で電解質と電極活物質が反応しない材料が限られている。また,硫化物系固体電解質は柔軟であるため,室温加圧で容易に界面形成が可能だが,作動時にも加圧が必要な点,電解質と電極活物質の界面での副反応や界面剥離等の物理的劣化を引き起こす点に課題がある。これらの課題を解決するために,全固体電池の固体間界面に液体電解質やポリマー電解質を複合化する検討がなされている。
筆者らは,リチウム塩のみから構成される低融点の溶融塩Single Cation Ionic Liquid(SCIL)に着目し,既存の電解液やポリマーでは実現が難しいリチウムイオンの濃度勾配フリーの電池設計を目指した。筆者らはLi[N(SO2F)2](LiFSA)とLi[N(SO2CF3)(SO2F)](LiFTA)の二元系リチウム塩Li[FSA]0.35[FTA]0.65が76℃と低い融点を示すことを見いだした1)。このSCILを酸化物系固体電解質に適用し,非焼結でリチウムイオンの濃度勾配を形成しない複合電解質を実証した2)。
また,硫化物系全固体電池の正極層にSCILを適用することで,副反応や物理劣化を抑制し,電池特性を向上できることを見いだした3)。今後,リチウム金属を用いた全固体電池への展開が期待される。
1) Y. Ito, K. Yoshii et al., J. Phys. Chem. C 2025, 129, 9656.
2) Y. Ito, K. Yoshii et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 2026, 28, 11574.
3) Y. Ito, K. Yoshii et al., ACS Energy Lett. 2026, 11, 5071.
伊藤優汰 産業技術総合研究所 電池技術研究部門