日本化学会

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化学の日の由来になったアボガドロ定数とは何でしょうか?

18世紀に気体を取り扱う化学が発展してくると,気体同士の反応について,反応物,生成物の体積比が簡単な比になることが見いだされました.例えば2体積の水素は1体積の酸素と反応して2体積の水(水蒸気)を生じます.その理由について,気体が原子から成り立っていると考えて説明しようとした化学者もいましたが,どこかに矛盾がでてしまい,うまくいきませんでした.1811年,イタリアの化学者アボガドロ(Avogadro)は二つの仮定を考え,その矛盾が解決できるとしました.

1) 酸素や水素,窒素などは原子で存在するのではなく,二つの原子から成り立つ"分子"として存在する.

2) 同温・同体積の気体に含まれる分子の数は気体の種類にかかわらず同じである.

 彼の考えはすぐには受け()れられなかったのですが,約50年後(日本の明治維新のころ)にカニッツアロが紹介してから化学者の間で受け容れられるようになりました.

 原子,分子は極めて小さく,軽いものですから,一つひとつの質量を測定することは不可能ですが,一定の個数を単位として(とら)えていくと便利です.ダース(12)やグロス(12ダース)という単位で大量の鉛筆を捉えますが,化学では原子や分子をモル(mol)という単位で捉えます.例えば水素2 molと酸素1 molが反応して2 molの水ができます.これを化学式で表すと下のように簡単に記されます.(O2の前の1という係数は省略されます)

2 H2 + O2 → 2 H2O

 1 molに含まれる,原子や分子の数は6.02 × 1023という(ぼう)大な数です.6 × 1023を普通に表すと6のあとに0が23個並ぶ,とてつもない数です.原子でも分子でも1 mol中に含まれる粒子の数が6.02 × 1023なのでmolあたりその数が含まれるということを,

6.02 × 1023 mol-1 (6.02 × 1023 /mol)と表記します.これがアボガドロ定数です.

 気体の話に戻しますと,1 molの気体は0 ℃,1気圧(1013ヘクトパスカル)で22.4 Lの体積を占めます.この体積に含まれる分子の数が6.02 × 1023ということです.

1 molの原子や分子が何グラムに対応するかは,原子量やそれから求められる分子量にグラムの単位をつけたものになります.炭素の原子量は12.01です.すなわち,12.01 gの炭素には6.02 × 1023 個の原子が含まれます.水素の原子量は1.008ですので,水素分子H2の分子量は2.016になります.つまり2.016 gの水素には6.02 × 1023 個の水素分子が含まれることになります.

 現在アボガドロ定数は 6.02214179 × 1023 mol-1と9桁まで精確(精密で正確なこと)に求められていますが,さらに精確に求める努力が化学者によってなされています.