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【お知らせ】「第59回国際メンデレーエフ化学オリンピック ブラジル大会」参加報告

2025年5月27日

 日本化学会は「夢・化学-21」委員会の支援の下、本年度の第59回国際メンデレーエフ化学オリンピック(IMChO)ブラジル大会へ初めて日本から2名の高校生を派遣しました。IMChOは1967年から続く高校生(に相当する中等教育課程の生徒)の国際化学コンクールです。本年は5月5日~13日の日程で、ブラジルの工業都市ベロ・オリゾンテのミナス・ジェライス連邦大学で、39か国40チームが参加して開催されました。大会では筆記試験が2日、実験課題が1日の計3日間の試験が行われました。日本からの参加生徒とその成績は次の通りです。

中尾仁(ナカオ ジン) 灘高等学校(兵庫県) 3年  銅メダル
米倉瑛翔(ヨネクラ エイト) 栄光学園高等学校(神奈川県) 3年  銅メダル

【大会スケジュール】
5月05日 - 大会会場に到着
5月06日 - 開会式
5月07日 - 第1回筆記試験(必答問題)
5月08日 - 第2回筆記試験(選択解答問題)
5月09日 - エクスカーション(世界遺産都市オウロ・プレット*観光)
5月10日 - 実験課題試験
5月11日 - 午前:市内観光で四つの博物館巡りのプログラム(日本チームは鉱物と金属博物館のみ見学)、午後:アービトレーション(生徒自身による得点交渉)
5月12日 - 表彰式
5月13日 - 帰国に向けて大会会場を出発

*オウロ・プレット:ベロ・オリゾンテから100 kmの歴史的都市、大学都市。ポルトガルの植民地の前半時期に金鉱山を中心に作られ、ベロ・オリゾンテに州都が移る前のミナス・ジェライス州の州都

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「国際メンデレーエフ化学オリンピック(IMChO)」とは

国際メンデレーエフ化学オリンピックは、国際化学オリンピック(IChO、今年で57回)よりも難しい問題が出され、高校生の化学コンクールとしては最難問大会と位置づけられています。IMChOとIChOの二つの大会はほぼ同じ時期に、旧ソ連邦(IMChO)と東欧(IChO)で高校生の国際化学学力コンクールとして始まりました。IChOは徐々に欧州全体とアジアに広がり本年は約90カ国地域の参加が予想されています。IMChOは当初中欧東欧諸国、中央アジアを中心に開催され、最近はアジア、南米の国が参加するようになり本年の参加国は39カ国でした。
IMChOでは例年、9日間の開催日程の中で筆記試験2日間、実験課題試験1日が行われ、それぞれ80、70、80点の配分で総合成績が競われます。そして、上位10%の生徒に金メダル、次の20%に銀メダル、その次の30%に銅メダルが授与されます。
筆記第1試験の課題は、日本の高校の教育内容よりも高度な化学プログラムを教育する中等教育学校のカリキュラムと同等の難易度とされ、筆記第2試験の問題はさらに高度なレベルとされています。筆記第2試験の課題は、無機化学、有機化学、分析化学、物理化学、生命化学と高分子化学(各セクション3問題)の5つのセクションに分かれており、生徒は各セクションから1つずつ、計5つの問題を解く、幅広い化学知識とそれを使いこなすことが求められる試験です。実験課題試験(5時間)では、指定された化学分析や合成を行う実験スキルに加え、結果を化学的に深く考察する力が求められます。
IMChO59ブラジル大会 WEBサイト:https://mendeleevolympiad.org/eng

国際メンデレーエフ化学オリンピック参加に向けた経緯

IMChOへの日本からの生徒の派遣は、IChOに参加した当時からの一つの拡張目標でした。
しかし、問題の難易度の高さ、参加国が多くなかったこと、日本語での受験ができなかったこと、などの理由で、IChOへの参加継続とコンスタントな成績の獲得・維持を優先してきました。その間もIMChOからの招待が続き、文科省からの勧めで参加準備をしたこともありましたが参加は実現しませんでした。IMChOの運営については少しずつ変化もあり、昨年は中国(深圳)で開催され、英語・ロシア語以外の言語での受験も一部行われ、日本、台湾、イギリスがオブザーバー参加を行い、視察・情報収集を行いました。2025年のブラジル大会では、自国語での受験が可能に規則の変更も行われ、参加国は大きく増えました。試験の難易度に懸念はありましたが、日本からも韓国同様初めて生徒を派遣しました(引率・翻訳は永澤明埼玉大学名誉教授)。
 高校生の化学のコンクールはいろいろな大会が催されています。各国の国際水準の化学素養を持つ人材育成・教育内容の更新の意向の表れと受け取ることができます。オリンピック小委員会は当面の間、参加国が最大のIChO、難易度が頂点のIMChO、さらに高校に直結する大学学部生の国際化学オリンピック(トルクメニスタン国際化学オリンピック;昨年度視察を実施)への派遣の実施を目標の三本柱に据えて、生徒たちが国際大会で鎬を削ることの支援を行っていきたいと考えています。