2026年5月14日
日本化学会は「夢・化学-21」委員会の支援の下、国際メンデレーエフ化学オリンピック(IMChO)の日本代表生徒として、昨年に続いて2名の高校生を選抜しました。IMChOは1967年から続く高校生(高校生に相当する中等教育課程の生徒)を対象とした最難関の国際化学コンクールで、本年の第60回大会は4月15日~23日の日程でロシア・モスクワ大学において開催されました。大会には37か国から 161名の生徒が参加し、2日間の筆記試験と1日の実験課題に挑みました。日本代表生徒2名は、日本国内から遠隔形式で得点交渉(アピール)を含む全日程に参加しました。日本代表生徒とその成績は次の通りです。
野中亮汰 筑波大学附属駒場高等学校(東京都) 3年 銅メダル
藤倉崇成 海城高等学校(東京都) 2年 銅メダル
(4月16日 - 開会式) 中継動画
4月17日 - 第1回筆記試験(8問必答試験、5時間30分) 化学会館(東京都)
4月19日 - 実験課題試験(5時間) 東京学芸大学附属高等学校
4月20日 - 第2回筆記試験(選択解答問題、5時間) 化学会館(東京都)
4月21日 - アピール(生徒自身による得点交渉) BigBlueButton(BBB)利用
(4月22日 - 表彰式) 中継動画
本大会における遠隔試験の実施は、実験課題を含むすべての項目を対象としてIMChO初の試みとなりました。今回の遠隔参加は、日本チームから大会本部に対して行った筆記試験への遠隔受験の打診が契機となって実現しました。大会本部から筆記試験の遠隔受験の承諾が伝えられた際、遠隔での実験考査の実施方法について、日本側に具体的な提案が求められました。これを受けて日本が作成した実施計画案が採用され全種目への遠隔参加が実現しました。遠隔試験の準備には途中からハンガリーチームも加わり、モスクワ大学、日本、ハンガリーの三者で、試験の秘匿性を確保しながら情報交換と調整を進めました。組織委員会は、遠隔試験実施方式の成立を受けて、遠隔参加者を正式の参加者として承認し、対面参加者と同等の基準で評価・順位決定を行い、表彰しました。
国際メンデレーエフ化学オリンピックは、国際化学オリンピック(IChO)よりも難易度が高い問題が出され、高校生対象の国際的な化学コンクールとしては最難関と位置づけられています。IMChOとIChOの二つの大会はほぼ同じ時期に、それぞれ旧ソ連邦(IMChO)と東欧(IChO)で高校生の国際化学コンクールとして始まりました。
IChOはその後、欧州全域からアジア、さらに世界へと広がり、58回目となる本年は約90の国・地域の参加が見込まれています。
一方、IMChOは中欧・東欧諸国、中央アジアを中心に開催されていましたが、最近はアジア、アフリカ、南米からの参加も増加し、2025年のブラジル・ベロオリゾンテ大会では39か国が参加しました。
IMChOでは例年、9日間の日程の中で5時間ずつの筆記試験2日間、実験課題試験1日が実施されます。配点は筆記第1試験80点、筆記第2試験75点、実験課題試験75点の230点満点。表彰は、上位10%に金メダル、次の20%に銀メダル、次の30%に銅メダルが授与されます。
筆記第1試験の課題は、日本の高校課程を超える高度な化学教育を行う中等教育学校のカリキュラムと同等の難易度とされ、筆記第2試験はさらに高度なレベルとされています。筆記第2試験の課題は、無機化学、有機化学、分析化学、物理化学、生命化学と高分子化学(各セクション3問題)の5つのセクションに分かれており、生徒は各セクションから1問ずつ、計5つの問題を解きます。幅広い化学知識とそれを使いこなすことが求められる試験です。実験課題試験(5時間)では、指定された化学分析や合成を行う実験技術に加え、結果を化学的に深く考察する力も問われます。
尚、両大会とも問題は母語への翻訳が認められています。
IMChO60第60回国際メンデレーエフ化学オリンピックロシア・モスクワ大会 Webサイトhttps://mendeleevolympiad.org/
IMChOへの日本からの生徒の派遣は、IChOに参加した当時からの一つの拡張目標でした。
しかし、問題の難易度の高さ、参加国が多くなかったこと、日本語での受験ができなかったこと、などの理由で、IChOへの参加継続とコンスタントな成績の獲得・維持を優先してきました。その間もIMChOからの招待が続き、文科省からの勧めで参加準備をしたこともありましたが参加は実現しませんでした。IMChOの運営については少しずつ変化もあり、2024年は中国・深圳で開催され、英語・ロシア語以外の言語での受験も一部行われました。日本、台湾、イギリスがオブザーバー参加を行い、視察・情報収集を行いました。2025年のブラジル・ベロオリゾンテ大会では、自国語での受験が可能に規則の変更も行われました。試験の難易度に懸念はありましたが、2025年の大会に日本からも初めて生徒を2名派遣し、いずれも銅メダルを獲得しました(引率・翻訳担当教員として1名派遣)。今年の大会では、翻訳を5名の(1名は取りまとめ、引率と兼務)、実験実施と監督を3名の日本化学会オリンピック小委員会委員計8名が務め、初の遠隔参加を実現しました。
高校生の化学のコンクールは世界的にいろいろな大会が催されています。各国の国際水準の化学素養を持つ人材育成・教育内容の標準化と現代化の意向の表れと受け取ることができます。日本化学会オリンピック小委員会は当面の間、参加国が最多のIChO、難易度が頂点のIMChO、さらに高校に直結する大学学部生の国際化学オリンピック(トルクメニスタン国際化学オリンピック;視察を実施)への参加を目標の三本柱に据えて、生徒たちが鎬を削る国際大会参加への支援を行っていきたいと考えています。