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【開催報告】「R&D懇話会242回」 苫小牧CCS施設見学会

2025年6月16日

 6月6日(金)に、産学交流委員会(委員長、住田康隆(株式会社日本触媒))傘下の懇話会企画小委員会(委員長、下嶋敦(早稲田大学))の企画として、出光興産株式会社北海道製油所、および日本CCS調査株式会社苫小牧CCS実証試験センターの見学会を実施した。

 最初に訪れた出光興産株式会社では、同製油所の概要やカーボンニュートラルの取り組みについて説明を受けた。具体的には、同工場の常圧蒸留装置による石油製品製造の歴史や環境への配慮について、さらにはCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)の社会実装に向けて、CO2とH2から製造する合成燃料の開発に着手していることなどが紹介された。北海道は車での移動が多く液体燃料が今後も必要とされる一方で、苫小牧市は国内唯一のCCS実証施設を有している。この地理的な特徴を活かして、同施設の石油製品製造工程で排出される副産物のCO2を回収することにより、同社独自の地産地消型のCNX(カーボンニュートラルトランスフォメーション)を実現していくという構想が紹介された。施設概要についての説明をお伺いした後に、同社の専用バスに乗車して製油所内を一周し、丁寧な解説を聞きながら参加者が実際に施設の全容を把握することが出来た。今回の見学会では、産学交流委員会の鳳城担当役員の働きかけにより、見学時間が限られる中で特別に希望する参加者全員と同社副所長との名刺交換会が実現した。

 次に、日本CCS調査株式会社では、隣接する北海道製油所から石油製品の製造工程で排出されるCO2のガスを回収して海底の地下深くに埋めるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)施設についてお話を伺った。日本は地震が多いことや、苫小牧市という大きな都市の近郊に施設が位置していること、さらに井戸を海底の地下深くに横に掘削を進めたことなど、世界的にも異例の施設であることから、各国からの参加者が多く、見学予約が絶えないそうである。現在はCO2の圧入が完了して施設そのものは稼働していないものの、参加者はアミン吸収溶液を用いた世界初の二段式のCO2吸収・放散塔を施設の屋上から実際に見学した。その後、本会で用意した大型バスに乗車して、圧入井(あつにゅうせい)に移動した。お話を伺って、参加者は当施設の安全性の他、CCSの課題や費用、技術的な目標等について把握することが出来た。貯留層に圧入されたCO2が超臨界状態となり、やがて長い時間をかけて石灰石などの安定な鉱物に変化することや圧入後にCO2の周囲をコンクリートで固める処理を行っているという説明を受けて、技術的な安全性は高いものと思われた。

 なお、見学会の前日には、本見学会の企画を立案した産学交流委員会の委員会を開催した他、北海道大学ワイン教育研究センターの見学会や、サッポロビール園での懇親会が開催された。特に、同大学のワイン教育研究センターは、今回の見学のために初めて貸切でオープンしていただいた。参加者はソムリエの沼田様やセンター長の曾根教授らにより、北海道ワインの品種や歴史について熱心に聞き入った後、各々が選んだワインについてテイスティングを行った。同センターと付属のワインセラーは、旧昆虫学・養蚕学研究室と旧昆虫学標本室を改装した建物であり、内装は新しいものでありながら、屋根や壁の建材には古い木材や石材がそのまま使用されており、同大学の歴史と伝統を感じる建物であった。特に、セラーの標本箱には、天然記念物のウスバキチョウやキマダラルリツバメの標本が展示されており、ワインセラーとなった今でも標本室であったことを語り継ぐ貴重な資料であると感じた。

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(事務局 田口)