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【開催報告】「R&D懇話会251回」種子島バイオ燃料関連施設見学会(同時開催:鹿児島大学「北辰蔵」見学会)

2026年11月5日

 10月16日(金)に、産学交流委員会(委員長 住田康隆(株式会社日本触媒))傘下の懇話会企画小委員会(委員長 山田裕貴 (大阪大学))の企画として、種子島のバイオエタノール関連施設(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター、新光糖業株式会社 種子島本部)の見学会を実施した。さらに前日の15日(木)には、鹿児島大学農学附属 焼酎・発酵学教育研究センター(北辰蔵)の見学会と意見交換会を開催した。これらの見学会の合間には、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターの一般向けのバスツアーにも参加することができた。
 近年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、植物由来のバイオエタノール燃料が注目されている。今回の見学会では、バイオ燃料用多収性サトウキビの品種改良を行う研究圃場と、バイオエタノール生産の実証実験を行う製糖工場を見学し、参加者が実際に現地を訪れて研究の理解を深め、また技術課題を把握する貴重な機会となった。参加者からは「さまざまな企業や大学の研究者と意見交換を行い、人脈を広げることができた」、「研究室運営の参考になった」などの感想が寄せられた。見学を受け入れてくださった関係機関の皆様と、ご参加いただいた参加者の皆様に感謝を申し上げる。

1. 鹿児島大学 焼酎・発酵学教育研究センター「北辰蔵」

 初日は、鹿児島大学の農学附属施設である「焼酎・発酵学教育研究センター(北辰蔵)」を訪れた。同施設は、鹿児島大学郡元キャンパスの北部に位置し、焼酎を製造する酒蔵を彷彿とさせる小規模な二階建ての建物である。通常は非公開であるが、本企画のために特別に見学の許可をいただいた。 当施設のセンター長である吉﨑准教授より、学生実験で使用する麹や、麹室、蒸留装置、微量分析機器、有機溶媒中に溶かした香りのサンプルなどをご紹介いただきながら、組織概要をはじめ、学生の教育や研究についてお話いただいた。同施設には、焼酎製造学部門と醸造微生物学部門の二つの研究室があり、学生実験では、ロットによる差をコントロールして良い状態にする必要性や、利き酒のトレーニングを積んでから実験で作ったお酒の順位を決める取り組み、さらに、学生によるお酒のラベルのデザイン作成や、研究室ではアジア各国からの留学生とともに蒸留酒製法の国際比較の実施についてお話があった。また具体的な研究の内容として、米や麦などの穀類原料に麹菌(こうじきん)を培養した状態のものを「麹」と呼び、焼酎の製造ではほとんどが「白麹」という菌種を使用すること、焼酎は蒸留酒であり製造の最終工程で加熱することなどの基本的な知識の他、焼酎に特徴的な香り成分として、甘い芳香のケトン類(β-ダマセノン)やアルコール成分(リナロール)といった揮発性有機化合物が含まれており、これまでの研究により加熱の工程が焼酎の香り形成に重要な役割を果たしている事実を科学的に明らかにしてきたこと*、酵母の細胞膜の流動性維持が発酵の健全性に影響を及ぼすことなど、化学や生物の専門的な内容もご解説いただいた。今後の展望として、地元の企業と協力しながら新しい麹菌や酵母を使用した焼酎開発についても触れていただいた。焼酎という身近な対象ではあるが奥深い内容に、見学時間の最後まで参加者からの質問が尽きなかった。

*β-ダマセノン:さつまいも中のβ-カロテンの熱分解により生成。リナロール:もろみの発酵中にさつまいもに含まれる配糖体に由来する非糖鎖部分が酵素作用により遊離し、蒸留により回収。

2. 意見交換会

 大学より鹿児島市電に乗車して町の中心部まで移動し、「天文館 吾愛人(わかな)本店」にて意見交換会を開催した。最初に、住田委員長よりご挨拶いただいた。直前に見学した「焼酎・発酵学教育研究センター」の話題を交えながら、焼酎を手に委員、役員、参加者、事務局との活発な意見交換が行われた。京都大学の阿部教授を皮切りに、各自の持ち時間1分程度で恒例の自己紹介も行われ、真面目な話題ばかりでなく冗談も飛び交う賑やかな会となった。最後に、鳳城副会長(出光興産株式会社)から締めの挨拶をいただいた。なお意見交換会および「北辰蔵」見学会には、鹿児島大学工学部の若手教員2名も参加し、産学交流委員会の委員や一般会員との親睦を深めた。

3. バイオエタノール関連施設

 二日目は、晴天の中、貸切バスに乗車して種子島を時計回りに一周しながら、各研究施設を見学した。

九州沖縄農業研究センター(安納)
 最初に、同センターの樽本室長と今回の見学会に講師としてご同行いただいた東京大学の小原教授のご案内のもと、サトウキビの育種区画を見学した。サトウキビは、元来、種子島には存在しないススキの仲間であり、石垣島で繁殖を行い種子島で品種改良を行っていること、刈り取り後も再生する「株出し多収」という効率的な育種方法や、製糖工場での現地試験に至るまでの12年に及ぶ育種プロセスなどについてご説明いただいた。同センターで育成して2019年に品種登録されたハルノオウギは、収量が少ないが若手の農家でも比較的栽培が容易であることから島の主流品種となっており、農業がさかんな地元に貢献してきたとのご紹介があった。さらに砂糖とエタノール、電力の使用用途から逆に考えて設計した研究品種について、当初は周囲から理解してもらえなかったという研究者の苦労談を伺った。見学の終盤に、希望者は皮をむいたサトウキビを試食し、甘味や歯ごたえ、繊維の多さを実感した。

JAXA種子島宇宙センター・門倉岬(南種子町)
 その後、島を南下して種子島宇宙センターに向かった。同施設では、宇宙科学技術館の自由見学と一般向けのバスツアーに参加した。宇宙科学技術館では、実際にロケットの実物部品に触れてロケット用の素材について体験的に学んだ他、バスツアーでは、高台からロケット発射台を眺め、間近でエンジンの実物や発射後の回収物等を見学した。続いて、宇宙センターから近く、鉄砲伝来の地として知られる門倉岬に立ち寄り自由散策を行い、屋久島を望む絶景を楽しんだ。

新光糖業株式会社(中種子町)
 最後に、島の中央部に位置する新光糖業株式会社を訪れた。ここでは、同社の塩浦本部長と小原教授にご説明いただき、工場の外周から原料ストックヤードや、圧搾機前原料投入口、ボイラー煤塵処理用煙突、バガス貯蔵庫の他、エタノール蒸留塔を見学した。工場ではサトウキビの収穫期には一日当たり1500 tのサトウキビを受け入れていること、植物由来資源を余すことなく利用し、糖汁以外の搾りかす(繊維質のバガス、不純物が含まれる泥状のケーキ、砂糖を取り出した残りの最終糖蜜)を工場の電力や各工程の熱源、農業用の肥料や飼料などに無駄なく利用することでマスバランスが取れていることを学んだ。手作業による刈り取りからハーベスター導入による収穫作業の機械化が進んだことで栽培品種が変化している現状や、一方で、日本ではバガスの利用が追いついていないという課題についても共有いただいた。収穫期でないため工場内部のバイオエタノール発酵槽見学や、時間の都合上、十分な質疑応答時間を確保することは難しかったが、小原教授による丁寧な解説により参加者はバイオエタノール実証研究についての理解を深めることが出来た。

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【日本化学会 「R&D懇話会」法人会員(五十音順)】

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(事務局・田口)