平成18年2月3日
日本化学会会長 村井眞二
科学・技術の世界は研究者、技術者の良心と相互の信頼の上に成り立っています。良心と信頼を裏切る不正行為は、科学・技術の存在そのものを危うくするばかりでなく、科学・技術への信頼の上に立っている社会からの不信の念という結果をもたらすもので、われわれ化学者、化学技術者の倫理の責任はまさに重大です。 日本化学会では、平成12年に会員の倫理の基本として「会員行動規範」を制定し、平成17年には会員の出会う可能性の高い具体的な事柄についての「行動の指針」を定め、同年には倫理委員会を設置して倫理のかかわる諸問題を検討して来ました。平成18年1月には、万一会員に不正の疑いのある行為が生じた場合に対応するための取り扱いを定めました。 このところ、韓国における胚性幹細胞に関する研究結果の捏造、建築士による偽装設計その他、科学・技術にかかわる不祥事が多く報じられています。最近では東京大学でRNAの研究にかかわって不正の疑いの濃い行為が報告され、残念なことにこの件は本会の会員とも無関係ではありません。 このときに当たり、会員各位には科学・技術の存立の根本は良心と信頼にあることに改めて思いを致し、それぞれの仕事に倫理意識を持って真摯に取り組むことを切望したいと思います。