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Vol.70, No.8 2022年

日本における感染症の歴史と化学
昨今では新型コロナウィルスに翻弄される毎日が続いている。しかし,振り返ってみれば,人類の歴史は,感染症と共にあったと考えても良い。そこで今回は「日本における感染症の歴史と化学」をテーマとして考えてみたい。前回の特集では,日本における感染症史において画期を成す北里柴三郎を扱った。
そこで今回は,まず彼の恩人でもある長与専斎を中心に,緒方洪庵の営為なども含め,北里以前の江戸時代の感染症史の状況を把握する。その後,北里の弟子筋にあたる秦佐八郎に光を当て,化学療法の歴史について考察する。さらに野口英世を扱うことにする。御存知のように偉人伝として著名な野口だが,時代と共にその破天荒な人間性にも光が当てられ,研究内容にも疑義が向けられているので,今回はその再評価を試みたい。最後に前回の特集の北里や鈴木梅太郎も含め,上記の人物たちの多くは初期のノーベル賞候補者でもあったが,残念ながら受賞には至っていない。そこで資料が公開されている現在,ノーベル化学賞だけでなく生理学・医学賞も含め,実際にどのような選考状況であったかを明らかにすることにより,当時の日本の科学(化学・医学)力を再確認していきたい。

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