日本化学会

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Vol.71, No.6 2023年

ジェンダーと科学 ―日本の女性科学者の先駆け―

2020 年,エマニュエル・シャルパンティエ教授とジェニファー・ダウドナ教授は,ゲノム編集技術の開発で,ノーベル化学賞を受賞した。女性2 人の共同受賞はこれが初であり,またその時点で化学賞受賞者は186 人もいたが,女性化学者としては6,7 人目にあたる受賞者で,女性受賞者の受賞者全体に占める割合は3.8 % でしかなかった。また,化学賞を最初に受賞した女性は,1911 年に「ラジウムおよびポロニウムの発見」で化学賞を受賞したマリー・キュリーであり,既に物理学賞も受賞していたが,本国フランスの科学アカデミーの会員になることはできなかった。1935 年にその娘のイレーヌ・ジョリオ=キュリーが,「人工放射性元素の発見」で化学賞を受賞したが,やはりフランスの科学アカデミーの会員になることはできなかった。科学の先進国と思われる西欧においても,科学の世界はかくもジェンダー・バランスが悪いのである。これを日本に舞台を移してみた場合,どのような状況になるのであろうか。
今回の特集「ジェンダーと科学―日本の女性科学者の先駆け―」は,この分野に造詣の深い以下の4人の執筆者に,丹下ウメ(1873-1955),黒田チカ(1884-1968),湯浅年子(1909-80),そして猿橋勝子(1920-2007)について書いて頂くことにした。

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