日本化学会

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Vol.72, No.3 2024年

戦時下の化学
ご存知のように,現在ウクライナとロシアとの間は戦火にある。戦争は決して過去のものではなく,他人事でもない。しかし徴兵制のない我が国は,ともすれば戦争は,対岸の火事のような存在に映りがちで,今一つ実感が湧かない読者も多いだろう。そこで今回のヘッドラインでは,化学史の観点から日本が関わった戦争のトピックを取り上げる。一つ目は,日露戦争で成果を上げたことで著名な下瀬火薬とその開発に携わった下瀬雅允を取り上げ,化学の視点から火薬製造の過程を考察する。二つ目は,近年注目されることの多い植民地科学の典型例である上海自然科学研究所とそれを巡る人々を事例に考察する。日中共同で始まったこの機関が戦後辿る軌跡を確認しよう。最後に,かつては三菱重工と並ぶ航空機メーカーであった中島飛行機とその関連会社である中島航空金属に光を当てる。多くの資料は終戦とともに破棄されたが,戦後従事していた人々の証言を基にして作成された史料からオーラル・ヒストリーを掘り起こすとともに,今も残る引き込み線等の戦争遺跡の実地調査を踏まえてその全貌を概観しよう。

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